渋谷ヒカリエの8/ ART GALLERY/ 小山登美夫ギャラリーで開催された建築のグループ展「happy talking」の展示作品です。
*展示について –建築とアートの境界を行き来する–
建築の展示とはどうあるべきか?現代美術のギャラリーで行う建築展はどうあるべきか?コマーシャルギャラリーで建築家が展示を行う意味とは?これらのことを出発点に、模型や図面、竣工写真で建築そのものを説明するという従来的な建築展ではない、この場所ならではの建築展のあり方を模索しました。 まず、私たちが日頃扱っているものの中で、自立したオブジェクトになり得るものとして、模型を展示することにしました。3つの小さな住宅の1/30模型は、敷地や周辺環境といった条件の説明を削ぎ落とし、モノとして見せることにしました。そして、それらの3つの住宅をモチーフに、「N邸」は杉戸洋さん、「赤い別邸」は桑久保徹さん、「オイルハウス」は山本桂輔さんに絵を制作していただきました。それらの絵は、私たちでは気づかなかった建築の一面を見せてくれたり、これまでなかったイメージを沸かせてくれたりしました。きっと観る人は模型の世界と絵の世界を行ったり来たりすることで、何かに気付き、理解を深めていけるのではないか。従来的な表現方法では難しかった、建築のモノとしての質や空間の質を伝えることにもつながるのではないかと考えました。 今回展示した絵と模型はプライスを付け、販売を行いました。さらに、手のひらにちょこんと乗るサイズの精密な1/300模型を3Dプリンターで製作し、気軽に購入できる価格で販売しました。 建築とアートをセットで展示し販売すること。このことによって、建築展の一つのあり方を提示し、建築とアートの距離を少しだけ縮めることができたとしたらうれしいです。
*3つの小さな住宅について
展示している3つの住宅は、延床面積70㎡、木造の2階建てという小さな住宅です。これらの住宅は、共通して「同じものが2つあること」から設計がスタートしています。 「N邸」はシンメトリーな平面と断面を持ち、全く同じ2つの部屋をつくることで、機能に束縛されない自由な空間をつくっています。「赤い別邸」は、向かいの家の豊かな緑を取入れるために正面には大きな四角い窓を、裏の公園側には光と風を取入れる丸い窓を開けています。それらの2つの窓際に挟まれた部屋は、守られ落ち着いた居場所になっています。「オイルハウス」は、階段で2等分した矩形の平面を、1階と2階で反転させ、それら2つのフロアを行き来することで広がりを感じられるようになっています。 小さいことは不自由なことではなく、むしろ濃密で豊かなものになりえるのではないか。今、私たちはそんなことを考えています。