ニューヨークに拠点を置く現代美術ギャラリーの東京スペースのデザインである。具体やもの派といった日本戦後美術を取り扱い、多くの外国人コレクターが訪れるギャラリーに「日本らしさ」を感じる空間を提案した。 東京・表参道交差点のすぐ近く、青山通りから小さな路地に入る。ギャラリーへのアプローチはもうここから始まっている。飲食店が立ち並ぶ路地の一番奥にファサードを構える。数奇屋建築を多く手掛ける京都の中村外二工務店が施工した、墨色の浮造杉板張り、漆黒の縦胴縁で仕上げられた黒いファサードは、細い路地の奥で一際異彩を放つ。エントランスドアを開くと、柔らかな光に包まれた明るい展示室が現れる。正面の壁一面は天井までの高さの障子に覆われ、自然光が降り注ぐ。二つ設けられた展示室は、シンメトリーに配置され、鑑賞者は同じ二つの空間を行き来して、作品を鑑賞する。「続き間」から着想を得たその空間は、いつまでも完結しない。自然光の心地よさと相まって、美術鑑賞の悦びを享受できる空間である。コマーシャルギャラリーにとって重要な場所であるビューイングルームは、小さいながらも特別感のある「茶室」を思わせる空間になっている。バックスペースは、収納、キッチン、トイレなどの機能を壁面に納めた「通り庭」のような通路を抜けて、突き当たりにオフィスを配している。 表参道という狭い文脈ではなく、日本という文脈、あるいは、アジアという文脈の中で、その外から見て、ぜひ訪れたいと思えるギャラリーとはどのようなものか?という問いの答えとして、各所に日本建築の空間の質を定着させ、日本らしい居心地の良さと贅沢さを実現している。
The interior design of the branch in Tokyo of the contemporary art gallery based in New York. The foreigner client requested the “Japan-ness”. The entrance facade is black-painted cedar board and its surface is finished with Uzukuri that is an imitation of Sukiya design. The two square exhibition rooms have the versatile continuation like a “Tuzukima” and the soft natural light enters from Shoji screens whose height is 3.3m. The space of the viewing room is like a tea room, which is small but gives special feelings.
ファーガス・マカフリー東京 / Fergus McCaffrey Tokyo
Date : 2018.3
Type : Art Gallery
Location : Minato-ku, Tokyo
Floor : 132.69㎡
Contractor : D.BRAIN, Nakamura Sotoji Koumuten
Photo : Kenta Hasegawa, Courtesy of Fergus McCaffrey Tokyo